意地っ張りな恋の話
ある日のバイト終わり、
ラストまで入っていたおかげで夜もすっかり更けてしまっていた。
今日は絢くんもいなかったし、平和な1日だった。
何かの虫が鳴く声を聞きながらゆっくりと家路についていると、
不意に後ろから呼び止められた。
「ちょっと、アンタ」
鋭い声に振り向くと、声の主を見て固まった。
いつぞやの、絢くんのストーカーお姉さんじゃないか。
「アンタまだあの店にいんの?
絢から離れてよ、いい加減にして」
今にも飛びかかって来そうだ。
絶対絶命、なんて言葉が目の前で踊る。
黙っているあたしに苛立ったように、お姉さんが腕を振り上げた。
ああ、また引っ掻かれるー…
「ちょ、ちょー!!!喧嘩はダメだって!」
この場に似つかわしくない、やけに軽い声。
声のした方を振り向くと、目に飛び込んできたのはヒヨコみたいな黄色い頭。
夜目にもわかるくらいに綺麗な色だった。