意地っ張りな恋の話
◎◎
澤くんがあんなこと言うから、あれからあたしはいやでも自意識過剰な考え方になってしまっていた。
絢くんにとってあたしは、ただのバイト仲間という感じではないらしい。
…なんかそう考えると優越感を感じる。
「なーににやにやしてんの」
「うわっ!!」
「うわっ、て…もうちょい可愛い声出さないわけ」
不意に耳元で声をかけられて、変な声が出た。
急に話しかけておいてドン引きした顔されても困る。
「…………ヨルくん、何よ急に」
「今ちょっと考えたべ?俺の名前忘れてたっしょー」
ひどいなあ、なんて嘘泣きをするその顔を冷めた目で見つめる。
あたしはアンタと友達になった覚えはない。
「まぁいいや、ゆりちゃん俺と遊んでよ」
「遊ばない」
「つまんねぇの、ノリ悪いなあ」
「ノリ悪くて結構。暇なら働きな」
図体だけはでかいんだから、せめて社会の役に立つことぐらいしなさい、
そう言いながらさっさと脚を動かす。
そんなあたしの態度にもめげる様子もなく、
ゆったりした歩調でついてくる。