振られたはずなのに王女の婚約者が元彼だなんて
 なのに、よ。
 これはいったい何が起きているの?
 自分の目を疑ったわ。
 頭も可笑しくなったのかと動悸すら覚えた。

 一段上がったそこから見下ろすそこにいた彼が姿勢を正して顔を上げた途端に衝撃が走ったからよ。

 私は彼を知っているのだもの。
 知らないはずだし初めて会うのに、彼が何者か覚えがあるのよ。
 それはおそらく彼も同じだったのだと思うわ。

 だって会った瞬間に甦って来たのよ。
 私が生まれる前の死んだ記憶が。
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