振られたはずなのに王女の婚約者が元彼だなんて
 他の誰に会うよりセオドールお兄様の顔を見られた今が一番嬉しい。
 私は喜びのあまり、駆け寄って飛びついた。

「お兄様、お兄様なのね? あぁ、もっとよく顔を見せて?」

 きっと兄妹でなければ、この光景を知らない人が見れば、再会を喜ぶ恋人に見えた事でしょうね。
 セオドールお兄様は飛びついて首にしがみつく私を愛おしそうに抱き締めながら笑うの。

「アリッサ、元気にしていたかい? 少し見ない間にすっかり女性らしくなったね。 これでは父上も心配なさって当然だ」

「まぁ、お兄様もすっかりご立派におなりよ。 いつぞやの夜会では大変でしたわね。 女性の誰もがお兄様からのダンスのお誘いを待っていたもの。 中には女性自ら誘いに来る方もいて、私は驚きました」

「おかげでアリッサと踊れなくて残念だったよ」

「あら、そのわりにとても楽しそうに踊っていらっしゃったわ」

「俺にはアリッサが一番大事だよ」
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