振られたはずなのに王女の婚約者が元彼だなんて
 セオドールお兄様は妹の私にとても甘い。   溺愛ともいえる。 それはお父様も似たようなものね。 そして私にとっても自慢のお兄様よ。

 立っているだけで絵画になるような美男子だから女性に人気なのではないわ。 王太子として次期国王として、学校で国の未来をも見据えて学び、とても優秀でいらっしゃったの。 剣術や馬術も見事だし、もう全てが完璧。
 多少は妹の贔屓目があるとしてもよ?
 まだ婚約者選びは進んでいなくても、セオドールお兄様は慌てていないわ。
 自分を夢中にさせる妹以上の存在が現れるまではこのままでいいのですって。
 私だってお兄様が大好きだわ。 できれば私がずっと一人占めしたいくらいよ。

「お父様にはお会いになった?」

「随分と賑やかに酒が進んでいたようだよ」

「あのね、お兄様……」

 部屋の片隅で私達兄妹の一部始終を見つめているユリシスを紹介しようとした。

 ところが……。
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