振られたはずなのに王女の婚約者が元彼だなんて
 最悪だ……。

 引き返そうか、いや、もうしばらく歩いて商店街を抜けたら家に着く距離だし、このまま気づかれないようにこっそりついていくか……。

 そんな事を頭に浮かべ、靴に視線を落としながら我慢して歩き続けた。

 すると、どこからか悲鳴のような声が聞こえてくる。それだけではない。
 悲鳴に混ざって何かがぶつかるような、恐ろしく鬼気迫る音。

 ゆうりとほのかも気づいたらしく、辺りを見回している。

 突然過ぎてわからなかった、何が起きたのか。

 だから気づかなかった。
 自分に迫っていたとは思わなかったから。
 聞いた悲鳴と音がまるで他人事のようで、私のものだとは思えなかったから。
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