【完】ひとつ屋根の下、気がつけばあなたがいた
小さかった頃の夢。 お父さんや家族の顔が浮かんでは消えた。
自分がどうしてこうなってしまったのか、後悔も何度も浮かんでは消える。
そうやってどれくらい寝ていたのだろうか、気が付くとおでこにひやりとした冷たい感触を感じ、目をゆっくりと開ける。
ぼやーっとした視界の中、私を上から覗き込む碧人さんの顔が見えた。
また、初めて見る顔だ。 この間驚いた顔と同じ。 心配そうなその顔は少しだけ切なげで、これが夢か現実かも分からずにいた。
冷やタオルをおでこから取ると、碧人さんは自分の大きな手のひらをおでこにあてた。
すごく冷たくって、なんだか安心するような気持ち。 真凛ちゃんも私が風邪を引くとこうやっておでこに手をあててくれたっけ。
「…まだ熱が高いな…」
「…碧人さん、今何時?」
耳を澄ませると、小早川家はシンと静まり返っていた。 碧人さんが帰宅しているのだから、きっと夜かと思ったけれど、ぼんやりとした視界の先に見た窓の空はまだまだ青い。
「まだ午前中だよ」
「そうなの…?碧人さん、仕事は?」
「伊織も帰って来て、少し忙しさが和らいだ。 今日は家で仕事するから大丈夫だよ。」