【完】ひとつ屋根の下、気がつけばあなたがいた
「悪いなんて言っていない。 誤解してた部分もあったよ。
お前は意外にも情が深くて、たまにすごく優しい所がある。 藍の気持ちを考えてくれて、ありがとうな……」
突然の思いがけない言葉に、こっちが言葉を失う。
そうやって褒められるのには慣れていないんだ。 今まで本当の私を見ようとしてくれた男の人はいなかった。
皆外見で判断して、見た目だけしか見ていなかったから……
だからそういう心からの優しい言葉には未だに慣れない。
熱が顔の中心にまた集まっていく。 こんな顔、見せたくない。
その時小早川家のインターホンが鳴った。
時刻はもう20時過ぎていた。 こんな時間に来客とは、小早川家では中々珍しい。
「こんな時間に誰だろう?」
「ご近所さんの回覧板じゃないの?? あー、そういえばこの間向かいの笹田さん?の奥さんに会ったんだけど
めっちゃじろじろ見られた。 真白いわく噂好きのおばちゃんらしいじゃん。
桃菜って女の人にウケが悪くって不愛想だから絶対嫌われてる……」
「あー…何か碧人くんのお嫁さんって勝手に吹聴して回ってるみたいだな」