【完】ひとつ屋根の下、気がつけばあなたがいた
第七章 碧人SIDE 君は実は優しい小悪魔。
第七章 碧人SIDE 君は実は優しい小悪魔。
「一体これはどういう事でしょうか……」
人の家に勝手にやって来ては戸惑っているこの男は、瀬能 水月。この春にボヤージュに入社した新入社員である。
今はmarinの方に配属になっているが、やがて本社に行って会社の中枢に行くべき人材だろう。
有名大学を出ている高学歴で、また高身長。だけど甘いマスクをしていて爽やかなルックスが女ウケをしそうではある。
だがまだ若いからどこか頼りなげではある。
「どういう事かはこっちの台詞だけど?
まさか瀬能くんが俺の実家に訪ねてくるなんてびっくりだ」
茶の間に案内して、テーブルを挟んで瀬能くんと向き合う。
正座をしてその場に縮こまる瀬能くんは、きょろきょろとその場を見回した。
桃菜は間に挟まって困った顔をしながら、お茶を出している。
ちなみに父親と三姉妹は部屋に行くように促したが、なんせ狭い家だ。 壁に耳を充ててこの修羅場を楽しんでいるに違いない。気配で分かる。
瀬能くんは言いづらそうに口をもごもごと動かす。