【完】ひとつ屋根の下、気がつけばあなたがいた
顔を上げて、俺と桃菜を交互に見つめる。
遠慮がちでおどおどしているくせに家まで押し掛けるなんて意外に図々しい奴。
こいつが桃菜に気があるのは知っている。 それが俺には気に食わない。
どーせ顔が可愛いとかそういう軽い感じの気持ちなのだろう。 桃菜も桃菜で馬鹿だから、優しくされると男ならばすぐに絆されてしまう。
俺はそれも気に食わない。
「あの、あのねぇ、瀬能さん…何か誤解しているかもしれないけれど…」
あからさまに困った様子で桃菜は言い訳を始めようとしていた。
別にこいつの誤解を解く必要もないと思うけど?
そういう桃菜の態度にも何故か苛ついた。 気を持たせてどうするつもりだ。だからお前のそういう所が男に誤解されて、こうやって勘違いまでして家まで押し掛けるというのではないか。
大体好きでもない男と映画に行く事さえ、俺は気に入らなかった。
「小早川さんと蛯原さん、一緒に暮らしているんですか?」
「だから…それは…」
「そうだけど、それに何か問題でも?」