【完】ひとつ屋根の下、気がつけばあなたがいた

桃菜の肩をぐいっと自分の方に引き寄せて言うと、彼女は口を金魚みたいにパクパクさせて怒りをあらわにした。

「もしかして二人って付き合っていたんですか?」

「そうだったとしても瀬能くんに関係ない話だろう?」

じろりと睨みつけると怯むかなと思ったけれど、瀬能くんは予想に反して顔を上げてこちらを強く見つめる。

「関係ありますよ。だって俺は…蛯原さんの事が好きだから…!」

まさかこんな堂々と告白をするような男だとは思ってもいなかった。
この状況で告白をされた桃菜は、突然の事にぴんと背筋を伸ばし体を硬直させた。

しかし直ぐ後に掴んでいた肩がぶるぶると小刻みに震えていた。   どうせ人の男を取ったり好きでもない男にチヤホヤされて喜んでいる馬鹿女だと思っていた。

その考えは、一緒に暮らす数ヵ月のうちに少しずつ変化を迎えていたのだけど。
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