【完】ひとつ屋根の下、気がつけばあなたがいた
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桃菜との出会いは数か月前に遡る。

高校時代からの悪友である市ヶ谷 伊織は日本で有数の洋菓子チェーン店ボヤージュの御曹司だった。

伊織はエスカレーター式で幼稚舎から高校まで進んだ典型的なお坊ちゃまで、俺は外部からの推薦入学。

周りを見渡せばお金持ちの人間ばかりの中、ひと際目立ってお金持ちだった伊織は出会った当初から周りからは浮いた存在だった。

一言で言うならば変わり者。 金で苦労した事がないせいか金には無頓着で、人にもあんまり興味なし。  校内でもモテていたが、いつも冷めた目で学校生活を送っているような奴だった。

そんな男と縁があり仲良くなって、彼の祖父にあたるボヤージュの会長にも何故か気に入られた。

大学進学は家庭の事情で諦めていて、高校を卒業したらまだ幼い妹達の為に就職をしようと決めていた。

しかし市ヶ谷会長の援助の下、俺は大学に行く事が出来た。 だから未だに市ヶ谷会長には頭が上がらない。

大学を卒業する年には会長自らボヤージュに入社して欲しいと頼まれ、伊織のサポートをして欲しいとお願いされた。

なので世間では大手企業と呼ばれるボヤージュに俺はすんなりと入社する事が出来た。
本社に籍をおきながら、伊織のフォローをする為に秘書として仕事をする事になる。
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