【完】ひとつ屋根の下、気がつけばあなたがいた
伊織には夢があった。
洋菓子店の御曹司と産まれたが、お菓子全般は苦手。
彼の兄が将来ボヤージュを継ぐとしても、一応ボヤージュという会社に属さなくてはならない。 そこにはお金持ちの家に産まれた苦悩も伴っていたと思う。
インテリアが好きだという伊織は、何事においても好きな事に真っ直ぐなような男で
ボヤージュ初のカフェを出店する代わりに彼に市ヶ谷会長が課した命令は、市ヶ谷会長の初恋相手の女性の孫と伊織を結婚させることだった。
そうして伊織と、後に彼の奥さんになる結婚相手の真凛さんのはちゃめちゃな結婚生活がスタートする事になった。
真凛さんはとても良い子だった。
とはいえ、互いに契約結婚。 伊織は人と一緒に生活が出来るような人間ではない。
この結婚もいつか駄目になってしまうだろう…そう思っていたが、意外にも意外、伊織と真凛さんの相性はぴったしだったようで
俺の心配は杞憂に過ぎなかった。
その真凛さんの繋がりで出会ったのが、この桃菜という性悪女である。
とにかく桃菜は性格が悪く、特に女性には嫌われやすいタイプの人間だった。
出会った当初からひしひしと感じていた。 男に媚びを売るのが大得意で、自ら親友だと言っていた真凛さんの旦那の伊織を奪おうとしていた。