【完】ひとつ屋根の下、気がつけばあなたがいた
ちらりと彼がこちらを見たから、その場で鼻を鳴らし踏ん反り返る。
俺は否定も肯定もしない。俺の家で預かっている以上、桃菜はうちの家族同然だ。そして家族を守る事は当たり前だ。
しかし桃菜は瀬能くんの言葉を全否定した。
「ひぇ…!桃菜と碧人さんが付き合っているなんて恐ろしい勘違いしないで下さい!
これは……ちょっと訳があって今碧人さんのご実家でお世話になっているだけなんです…。
だから私達付き合っているとかそういう関係ではないので」
怯えた目をして桃菜がこちらを見上げる。
聞き捨てならない言葉ではあった。
確かに俺達は付き合ってはいないけれど、じゃあお前は瀬能くんと付き合うつもりがあるのか、と。
そうじゃなければ誤解させたままきっぱり振ってやるのが優しさなのではないかと。
「家に困っているなら、俺一人暮らしだし蛯原さんの一人くらいは何とでもなるよ」
遠慮がちに見せてありえない事を繰り返す目の前の男にぷっちんとキレそうになる。
しかし平静を装って彼に言った。