【完】ひとつ屋根の下、気がつけばあなたがいた
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年明け、一月。
日本で三本の指に入る老舗お菓子店であるボヤージュから、第一号店であるカフェmarinがオープンした。
私、蛯原 桃菜が
そこのオープンニングスタッフとして、そして株式会社ボヤージュの正社員として働く事になったのは全てコネである。
とある事情から無職になり家も失った私を救ってくれたのは、小早川 碧人という男だ。
仕事も与え家も提供してくれるといえば聞こえもいいが、小早川 碧人の本当の正体は悪魔だ。しかも近年稀に見るほどの悪党である。
以前働いていた家具メーカーを衝動的に辞めて、貯金ゼロの私は一時期親友である 市ヶ谷 真凛(旧姓、蓮見)と彼女の旦那さんになったボヤージュの御曹司、市ヶ谷 伊織のマンションに居候していた。
碧人さんは、伊織さんの秘書をつとめる人物にあたる。
そのマンションでいざこざがあり家を追い出された私の行きついた先は、様々な男の家を転々とする事だった。
実家には帰れない理由がある。
それを見かねた碧人さんが仕事と、住居まで面倒を見てくれたわけだ。