【完】ひとつ屋根の下、気がつけばあなたがいた

働きだした初日、男性客に絡まれている私を助けてくれた。  女性とは距離感がいまいち掴めなくって人間関係はうまくいかない私だけど、梓さんとは何故か初めから仲良くなることが出来た。
それはきっと梓さんが裏表なく、私にも親切に接してくれるお陰なのだろうけど。

「本当に蛯原さんは可愛いわよねぇ。今日のお洋服もお姫様みたい…!」

わざとらしい程褒めてくれるけど、ニコニコ笑っていていつも優しいから悪い気がしない。

はじめは不安だったけれど、梓さんがいてくれるお陰でここで仕事が出来ているといっても過言ではないのだ。

「もう~…梓さんったら褒めすぎですよぉ~…」

「本当に可愛いって思ってるんだもの。はじめ見た時、小動物かと思った!
彼氏がいないなんて嘘みたい…。私が男だったら絶対蛯原さんと付き合いたい!」

…性格めちゃくちゃ悪いんだけどね。
裏表がなくってサバサバしてて、それでいて人を嫌な気持ちにさせない性格の良さ。
私が男だったら梓さんみたいな女の子の方がずっと彼女にしたい。

ディスクに座りながら頬杖をついている梓さんは、にこにこと笑いながら視線をこちらへ送る。

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