【完】ひとつ屋根の下、気がつけばあなたがいた

「今日は小早川さん、来ないのかしら?」

「碧人さん……?碧人さんなら今日は午後から本社に行くって言ってたから来ないと思いますけど」

碧人さんの名前を出すと、梓さんは一層ニヤケ顔になる。

「あら~、よく知っているわね~」

「ちが…違う…!
昨日たまたま話をした時にそう言ってたからです…!」

「小早川さんと蛯原さんっていっつも仲良しよねぇ。私から見たら最高のカップリングなんだけど」

碧人さんは伊織さんの秘書だから、伊織さんのお店であるmarinには頻繁に顔を出す。
仲が良い、は勘違いだ。

碧人さんはお店に顔を出すと、人には知られぬように鬼の形相で私の仕事っぷりを監視している。

後で駄目だしされたのは一度や二度ではない。 そういう姿が周りから見ると仲が良さそうに見えるらしいが、一緒に暮らしているからその雰囲気が滲み出てしまっているのだと思う。

けれど私が碧人さんの家で暮らしているのは、周りには秘密である。

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