【完】ひとつ屋根の下、気がつけばあなたがいた

「止めて下さい。私と碧人さんは少しもそういう関係じゃないですから。
碧人さんの友人が私の友達と結婚しただけなんです。 だからそれだけの付き合いっていうか…」

一緒に暮らしていたって、それは家族と一緒。 甘い同棲生活なわけじゃないから
それに碧人さんはmarinの女子社員やパートのおばちゃんから大人気である。
誰にでも物腰が柔らかくって甘いマスク。 気遣いも人一倍で、良い意味で誤解されやすい人。

私は本性を知っているから、よそ行きの碧人さんの顔を見ると胸がぞわぞわとする。
完璧な好青年と影で呼ばれている彼が、実は家ではそれ程愛想もなくってずぼらな一面もある。
人の気にしている事をずばずばと言う悪魔にしか見えない。

彼の中の私は一言でいえば、ぶりっ子な狸らしい。 本人の目の前でそんな言葉を使うなんてデリカシーに欠けると何度も怒ったものだ。

確かにぶりっ子だし、狸顔なのに間違いはないけれど。
ずけずけと物を言うから、性格を直した方がいいと何度も言われた。

我儘で子供染みていると何度言われた事か……。  つまり碧人さんの私への扱いは、あの幼い三姉妹と同じなのである。

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