【完】ひとつ屋根の下、気がつけばあなたがいた
「さって、仕事仕事。 梓さん開店準備しますよ。時間がないんですからあ…」
「はぁーい!可愛い子と仕事が出来るとやる気も起きるわ~」
さらりと人の気分を良くしてくれる梓さんと仕事をしていると、こっちの方がやる気がみなぎってくる。
パートのおばちゃんからは相変わらず評判も良くない私だけど、いつも梓さんがフォローしてくれてやりやすい。
はじめは一匹狼でもへっちゃらだと思って梓さんに気を遣わなくていいと言ったけれど、それを梓さんは苦ではないと言ってくれた。
面倒見の良さは、大好きな真凛ちゃんに重なる。 生まれつき優しい人なのだろう。
だからこそ、迷惑をかけたくないとも思う。
私はもう大切だと思う人を傷つけたり悲しませたりしたくない。
今までの自分を何度も省みて、出した結論だった。 相変わらず人嫌いだけど、大切なものは大切にすると決めたんだ。
それが自分を信じてくれた人への恩返しだという事も、学んだ。
その日は午後から雨が降って人出もまばらだった。
仕事を終えてスーパーで買い物を済ませて小早川家へと戻ると小学生組と秀人さんは既に家へ帰って来ていた。
秀人さんは大工なので雨になると仕事が早く終わるのだ。