【完】ひとつ屋根の下、気がつけばあなたがいた
ここまで話せば碧人さんは私のピンチを救ってくれた天使のように思えるかもしれない。
しかしそれは大間違いなのだ。 彼は生まれながらの悪魔であり、悪党なのだ。
現在私は、碧人さんと一緒に暮らしている。 当然ながら甘い甘い同棲生活つーやつではない。
小早川家には碧人さんの他に、彼とはちっとも似ていない大工の父親と…そして小生意気な三姉妹が住んでいた。 それでも行き場のない私は碧人さんを頼るほかに道は残されていなかった。
台風や地震でも来てしまえば崩れてしまいそうなボロい平屋から、私の新しい生活は始まった。
「マジで……?何このボロ家」
碧人さんの実家に無理やり連れられたのは、彼が秘書をしている伊織さんに私が手を出そうとしたからだ。
伊織さんは私の大学時代の友達である真凛ちゃんの旦那さんになった人で、ボヤージュの御曹司でもある。
因みに伊織さんは全然私になびかなかった。
今までの人生で私の事を好きにならない男はいなかった。 自分で自分の事はよく分かっている。
結局男の人っていうのは、放って置けない感じの女の子らしい子が好きだ。 ぶりっこにだって中々気づけない。