【完】ひとつ屋根の下、気がつけばあなたがいた
さらりと無表情のまま碧人さんが言った。 その言葉に思わず胸がドキドキしてしまう。
特別な意味があって言った言葉じゃないって分かっているのに……
「桃菜の作るご飯はうまいし、家事もやってくれてて真白も助かってるだろうし」
「碧人さんは桃菜を家政婦か何かと勘違いしていますね。
お給料ももらってないのに人をこき使ってさ~~~
たまには桃菜もご奉仕されたいよ。仕事で疲れちゃってるんだからッ」
なんて口に出してみたけれど、実は全然嫌ではない。
小早川家はボロ家だけど、家族って感じがする。
家族同士の距離感が近くて、煩すぎるくらい賑やかだけどこの感じは嫌いじゃない。
家族の愛情に恵まれなかった私には、とても新鮮で心が温かくなる。
うむ、と何かを考えた碧人さんはカレー皿を台所に持っていた。
それをサッと洗い、車のキーケースを手にする。
「じゃあ、今日はどこかに出かけようか? カレーは夜に全部カレードリアにして食べればいい。」
「え?!碧人さんと?!」
「何だよ、その嫌そうな顔は…」
「だって碧人さんとお出掛けするとお説教から始まるし!」