【完】ひとつ屋根の下、気がつけばあなたがいた
昔伊織さんと真凛ちゃんのデートの邪魔をしようとしたことがある。
碧人さんによってそれは阻止され、一日いっぱい碧人さんとお出掛けした事があるのだ。
あの日は散々だった。
都内のお洒落なカフェに連れて行ってくれたのはいいけれど、碧人さんのお説教は延々と続いた。
まあ、伊織さんと真凛ちゃんの心配をしての親心だったのかもしれないけど
とにかくあの日飲んだミルクティーはすっごく苦く感じた。
元々男性にはチヤホヤされて育ってきた私にとって、碧人さんは想定外中の想定外なのだ。
碧人さんの前でいくらぶりっ子して可愛らしく振舞っても、意味がひとつもない。 浅はかな私の思考など出会った時に見抜いてしまっていたのだから。
「まあ別に…。碧人さんがそれだけ言うなら一緒にお出掛けしてあげてもいいけどぉ~?
どーせ暇だったし」
そう言うと両手でぎゅむっと私の頬を掴み引っ張る。
「はにすんのよッ」
「いや、生意気だなあと思って」
「もぉ、離してよ! てゆーか出掛けるなら今すぐに着替えて来る。
ちょっと用意に時間が掛かるから待っててね」
「お前準備遅いもんな…早く済ませるように…」