【完】ひとつ屋根の下、気がつけばあなたがいた

「うちでは犬猫なんて飼う余裕がないけど、三姉妹は皆動物好きだ。
昔から家族でどこかに出かけるっていったら大概動物園とか水族館が多くってな。」

「ふぅん、家族行事って感じか。 桃菜は家族と一緒に動物園に来たことないから羨ましいけどね」

車を駐車場に止めている時碧人さんにぽつりと漏らすと、彼は少しだけ気まずそうな顔をする。
悪魔だって気を遣う時がある。 いや、本当は悪魔なんかじゃない事を知っている。

「そうだったか…」

「まあ別に家族と一緒に来たいなんて思った事ないから
変な事言っちゃった。ごめんね。
あ!碧人さん、行こう! 早く早く!」

急かすように車から降りて、入り口に向かっている時に思った。

もしかしたら本当に小さい頃、まだ物心つく前は家族で動物園に来た事があったかもしれない。 家族にとって通過儀礼みたいな場所でもあるし

けれどお父さんが再婚してから、産まれた弟と三人で動物園に行ったのは知っているけど私はその輪の中に入っていない。

入りたくもなかったから別にどうでもいいんだけど。

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