【完】ひとつ屋根の下、気がつけばあなたがいた

「そういえば、見ちゃったわよ~」

「え?」

「さっき瀬能くんとイイ感じだったじゃない~?
んで瀬能くんに聞いたら、蛯原さんと連絡先を交換で来たって喜んでいて
今度一緒に映画に行くんですって~?」

「そ、それは…」

「瀬能くんったらずっと蛯原さんの事いいって言ってたものね~~
うふふ、私の知らない間に仲良くなっちゃってて~。
じゃあ、私は帰ります。 二人ともお疲れ様でしたー」

それだけを言い残し颯爽と帰っていってしまった。
そんな言葉だけ残していなくなるとか……気まず!!
恐る恐る振り返ると、明らかにご機嫌を損ねた碧人さんが両手を組んでこちらを見下ろす。

「データー入力はまだ終わらねぇのかよ」

苛々とした口調でそう言った。 さっきまで梓さんと一緒に居た時の態度とは大違いだ。
二重人格野郎が…!

「今終わりましたから!待たせてすいませんでしたあー!
直ぐに帰る準備しますから、碧人さんは車で待っててください!」

てっきり待たせてしまった事で怒らせたのだとばかり思っていたけれど、仕事を終わらせ大慌てで碧人さんの車に乗り込むと
彼は更に不機嫌そうに車内でも無口だった。
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