可愛いキミは、僕だけの××
えーっと、料理本は……あ、あった。
でも、お目当ての本は本棚の1番上というなんとも取りにくい場所にあって。
試しに腕を伸ばしてみるけど、全然届かなくてすぐ背伸びをやめる。
大人しく脚立を探そうと思ったら、
ーーーガラッ
「えっ、」
突然扉が開き、物静かな場所に誰かが駆け込んできたのが分かる。
……うそ、秋元先輩!?
音のした方へ視線を向けると、髪を乱して少し汗をかいたせんぱいがいた。
「……!」
人がいると思ってなかったのか、せんぱいは私の姿を見つけると目を大きく見開く
私もビックリだよ!
ちょうどせんぱいの事を考えてたんだもん。
何やら汗かいて慌ててるっぽい。
「蓮夜くーんっ!どこにいるのぉ〜?」
秋元先輩を呼ぶ声が聞こえて、妙に納得した。
最近、秋元先輩の彼女と噂されている女の先輩の声だ。
喫茶店でバイトの休憩中に、その話題になって瞳さんがこんなことを言ってたな。
「あー、蓮夜くんに引っ付いてる子でしょ。どれだけ冷たくあしらわれてもめげなくて、どうにか彼女になろうと奮闘してるみたいよ?
その子と同じクラスなんだけどさ、男子と女子とであからさまに態度を変えるから、正直あたしはあんまり好きじゃないかな」
確かに、ここのところよく秋元先輩と一緒にいるのを見かけるような……てっきり付き合ってると思ってたら違うみたい。
もし女の先輩が図書室に入ってきたら、間違いなく秋元先輩に引っ付くはず。
絡んでいる所は見たくないし、邪魔って言われる前に退散した方が良さそうだ。
「すみません。私、出ますね」