可愛いキミは、僕だけの××
せんぱいが真剣な顔でそう告げる。
いつの間にか戸梶先輩を解放していて、先輩は「マサ〜〜!」と堀内先輩に泣きついていた。
そこまで真剣になるほど、大切なんだね。
モノなのか、人なのか検討もつかないけど答えを求めるように私を見つめているから、思ったことを素直に口にした。
「やる前から諦めずに、一度手を伸ばしてみるのもアリだと思います」
「……もし怖がられたり、嫌がられたりされたら立ち直れないよ」
そんなの、絶対に嫌だと眉を下げる。
今日のせんぱいはなんだか弱気だ。
確かに、その気持ちはすごく分かる。
「でも、私だったら何もしないでずっと見てる方が嫌です」
何もせずに、ずっとせんぱいを遠くから見ているだけだった私。
行動を起こせない自分が嫌で嫌で仕方がなかったの。
彼女が変わっていく秋元せんぱいを見るたびに、胸がズキズキ痛んで後悔した。
明日こそは、明日こそはとズルズル先延ばしにしたって、結局何もしない。
ほんとにせんぱいが好きなら、私自身が変わらなくちゃいけないんだ。
「それに……少し乱暴にしたくらいじゃ、壊れないかもしれないですよ」
私の言葉に、せんぱいがピクリと反応した。
大事な物が何かは分からないけど、落ち込んでいる彼を見たくなくて勇気付ける言葉を続ける。
「無理矢理でも近づくことによって、
色々なことが見えてきます」
私も実際せんぱいに近付き関わることで、意外にもよく笑って、よく怒る、感情豊かだ人だってことが分かったし。
彼女がいないと分かった時は一番嬉しかったなぁ。
「本当に、近付いても平気か?」
あまりにも真剣な表情でズイッと近付いてくるので、ヒッと小さく悲鳴を上げ一歩後ずさる。
こ、こんなに真剣になるなんて、あまり無責任なことを言わない方がいいんじゃないの!?……ダメだ、早く答えてと言わんばかりの無言の圧力がすごい。