嘘カノでも幸せになれますか
『ユズ? どうした? 待ってても来ないから。何かあったのか?』
怒ってないの? ダンが心配してくれている。
「ダン、ごめんなさい。ちょっと用事が出来ちゃって。まだ時間掛かるから先に帰ってくれる? 本当にごめんね」
『ユズ、今どこにいるの? まだ学校だろ? 俺、そっち行くわ』
「えっ? だ、大丈夫だよダン。そんな心配してもらうようなことじゃないから」
そんな会話をしている時、バスケ部はまだ休憩時間じゃないのに、体育館の2階へ一輝先輩が上がってきた。
「柚葉ちゃーん! マジで今日も練習観に来てくれたんだ」
一輝先輩が大きな声で話し掛けるから、通話中のダンにその声が届いてしまったみたいで、
『ユズ? もしかして一輝と一緒にいるのか?』
「えっと、一緒ではないけど。あの、えっと」
もう、ダンになんて説明していいか分からない。
私がしどろもどろになっていると、ダンがスマホの通話を切った。
「あ・・・切られちゃった」
きっとダンは一緒に帰るのを諦めたんだよね。
それとも約束をすっぽかした私のことを呆れたかな。