嘘カノでも幸せになれますか

「えっと、柚葉ちゃん? 誰を探してるの?」

えーっ! 私に話し掛けてるの、一輝先輩。

「あ、あの。探している人のクラスが分からないんですけど。あ、名前も分からなくって」

「ん? それって一目惚れした相手を探してるってこと?」

「ちっ、違います! そんなんじゃありません!」

私の顔は真っ赤になっているんだろう。自分でも分かる。

それでも一輝先輩の誤解を解かなくちゃ。

一目惚れなんてあの優しい先輩に対して失礼だよ。

そんなワタワタしている私を見て、咲希が笑いながら助けてくれた。

「この子、昨日駅でお金を貸してくれた人を探しているんですよ。名前を聞き忘れたらしくて。覚えている顔の記憶だけで人探しです」

それを聞いた一輝先輩が人差し指を私に向けて、

「もしかして、それって暖のことかな? 宮野暖(ミヤノ ダン)」

「えっ! 暖先輩ですか?」

「暖」という名前を聞いて咲希が驚いたようだった。

咲希の知っている先輩なのかな。
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