嘘カノでも幸せになれますか

「どう、俺の演技。完璧でしょ、柚葉ちゃん。もう大丈夫だからね。ダンに任せてたら簡単に解決できるものを複雑にするだけだから」

それを聞いたダンが一輝先輩に、

「茶番だな。よくあの子が一輝の棒読みな演技を信じたよな。俺、見てるの耐えられなかったわ。くくくっ」

ダンが一輝先輩を笑いながら否定したけど、私は思わず一輝先輩に対して拍手を送った。

一輝先輩の真似する唯花ちゃんは全然似ていないのに、二人の会話が想像できて、凄いなって思ったよ。

それに一輝先輩は本当に皆のことが好きなんだろうな、って感じるから、唯花ちゃんのことも好きだって言うのは嘘じゃないよね。


「一輝先輩、本当にありがとうございました。私、心配で眠れなかったんです。良かったぁ。一輝先輩のこと、見直しました。私も一輝先輩のこと好きです」

「えっ? 柚葉ちゃん、それマジで言ってんの? うぇーい! 聞いたか、暖。俺やっぱり柚葉ちゃんと付き合う」

「ふざけんなよ、お前ら! ユズも何言ってんだよ。ムカつくな。マジでムカつくわ。俺、先に行く。じゃあな、ユズ」


はい? ダンってば本気で怒ったの? 


本当に一人で先に行ってしまった。


「ダンは何を怒っているんだろう。 別に私、本当の彼女じゃないんだから怒らなくたっていいのに」
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