嘘カノでも幸せになれますか
今日はダンとバンドMGRの練習の日なんだよね。
MGRのオリジナル曲を3曲全部覚えてきたから、そのお披露目もあるし、今日はボーカルさんも合流するからちゃんとした演奏ができるんだ。
バンドの活動をとても楽しみにしていたの。
楽しみだったんだけど・・・。
今朝のダンは、なに? どうして怒ってしまったのかな。
あれは本気? それとも演技?
だって、嘘で付き合っているのに怒るなんてあり得ないよね。
ダンが怒ってしまったことをずっと考えていて、何か他に大事なことがあったような気がするけど、思い出せない。
ダンはお昼休みに来てくれるかな。
私はダンからのラインを見逃さないようにずっとスマホを握りしめていたのに、結局ダンからのお誘いラインは来ることが無くお昼休みになってしまった。
「柚葉、今日も暖先輩とお昼食べるの?」
咲希に聞かれて、
「ううん。今日は誘われてないよ。それにね、朝、ダンのこと怒らせちゃったみたいでね、良く分からないの」
周りに人が居なかったから、咲希に小さい声で今朝の出来事を話した。
「話を纏めると、柚葉が軽い気持ちで一輝先輩が好きです、って言ってしまったから暖先輩がやきもち妬いたってことだよね?」
「やきもちって、おかしいよね。私たち本当はそんな関係じゃないのに」
ん? 自分の発言に何か引っかかるものがある。
あっ! そうだ、思い出した。
今朝、私の要らぬつぶやきのせいで嘘の彼女だって一輝先輩に聞かれてしまったんだ。
「咲希、大変なことを思い出した。私、ダンの教室へ行ってくる」
私は咲希を残し、ダンのいる2年2組へ急いだ。