嘘カノでも幸せになれますか
「そっ、そんなことまだ言ってるの? あれは違うでしょ。あの好きは、万人が好きっていうのと同じ好きで、誰か一人を想って言う好きとは違うのくらい分かるでしょ! って言うか、そんな事で拗ねるダンの方がおかしいよ」
『じゃあ、ユズは誰が好きなんだよ』
「・・・べ、別に好きな人なんて。いないもん」
あっぶない。ダンの誘導尋問にあやうく引っかかるところだった。
『ねぇ、最初の沈黙は何? 誰かの名前を言おうとしてなかったか? なあ、ユズ。そこは俺の名前を・・・』
あれ? スマホから聞こえる声と、背中越しに聞こえる声が重なった?
「えっ?」
私はスマホから耳を離し、後ろを振り返ってみる。
そこには片手にスマホを持ってヒラヒラさせてこちらを見ているダンと、隣には一輝先輩。
「かっ、一輝先輩!」
ダンと呼べばいいのに、一輝先輩が居るとダンに話すことができないから、思わず一輝先輩の名前を言ってしまった。