嘘カノでも幸せになれますか
私は暖先輩の顔を見てすぐに昨日の優しい先輩だと分かって。
「あっ! 昨日の駅の人。会えてよかったぁ」
「おっ、やっぱり暖だったのか。良かったな柚葉ちゃん、一目惚れの人に会えて」
「一輝先輩! 違うって言ってるじゃないですか! そんなんじゃないですから」
「うわ! 俺のこと全否定?! 柚葉ちゃん、怖いっ」
もう何を言っても一輝先輩に口では勝てないと理解したから、一輝先輩を軽く無視して、一輝先輩の隣にいる暖先輩の方を向いて、
「あの、昨日は駅でありがとうございました。これ・・・」
私は昨日のお礼を言いながら封筒に入れた千円を暖先輩に渡した。
「ああ、昨日の。お財布あった? もう忘れんなよ」
「はい。本当に助かりました。ありがとうございました」
私が暖先輩へ手渡した封筒を見た一輝先輩が、
「おお?! その封筒。なんだ柚葉ちゃん、暖にラブレターか? やっぱり一目惚れかー」
「だから・・・。 違うんですって! ねぇ、咲希、一輝先輩に何とか言ってよ」
「ふふふっ。一輝先輩がこんなに柚葉をかまうなんて思いませんでしたよー。柚葉はシャイなんですからそんなにからかわないであげて下さい。面白いけど」
「咲希まで一輝先輩とグルになって! 私もう教室に帰る。では、暖先輩。昨日は本当にありがとうございました。失礼します」
私が咲希をここに残して自分の教室へ戻ろうと歩き出した時、暖先輩から声を掛けられた。
「ああ。ラブレターありがとう」
「はあああい? 暖先輩まで! それラブレターじゃないですから!」
そう叫んで私は3人を残して自分の教室へ駆け足で戻った。