嘘カノでも幸せになれますか

「あのっ、手。手を離してください。それと、ダンとはただの先輩後輩です」

「そうなんだー。先輩後輩に“ただの”って付けちゃうところが分かりやすいよね、ユズ」

「なにがですか? 私のなにが分かりやすいの?」

「ん-、でもダンはだめだよ。ダンには香梨奈って言う大切な人がいるからな。ユズも知ってるんでしょ?」


”香梨奈” 


その名前を聞いて私の顔から血の気が引いていくのが分かる。

「手を離してください!」

そう言ってカイトさんから無理やり手を引っ込めて、やっと離れることができた。

私の今の態度は良くないってことは分かってる。

けど、その名前を聞いただけで冷静ではいられなくて。


「私、何も知りません。ダンのこと全然知らない」


私の態度を見たアヤさんとタクさんが目を合わせて何か言いたそうだった。

私の態度を責められるのかな。

私はカイトさんにしてしまった酷い行動を謝らなければいけないね。
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