嘘カノでも幸せになれますか

「・・・ユズ?」

路地から戻ったダンがスマホを片手に持ち、不思議そうに私を見ている。

「ダン。皆が待ってるよ。早くスタジオに戻らないと」

そう話す私の声が消え入りそうに小さくて、少し震えているのがわかる。

「ユズはどうしてここにいるの? 元気ないけど、どうした?」

「そうかな? 元気だよ。さ、戻ろう」

「おう」

ダンは私よりも先にお店に入り、スタジオへの階段を上がって行く。

その後ろ姿を見て、もう嘘で付き合うのは止めようって思った。
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