嘘カノでも幸せになれますか

外に出ると初夏の夜風が髪を揺らす。

「わぁ、この匂い。もうすぐ夏だ」

そんな独り言をつぶやいてみる。

「ん? そうだな、もうすぐ夏だな」

私の独り言を拾って答えてくれるダン。


「帰るぞ、ユズ。後ろじゃなくて隣を歩けよ」

いつも隣を歩くように促してくるダン。

本当は嬉しいのに、今日はそれが辛い。

それでも隣に並び、駅までの道を歩く。

「手、繋ぐ?」

それは意味をなさないこと。ダンには好きな人がいる。

「ううん。繋がない」
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