嘘カノでも幸せになれますか

「それで、本当に結婚の約束してるわけ?」

カイトさんがそこを突っ込んでくる。

「違いますよ、あれは小さい頃の口約束です。ね、たっくん」

「俺はマジなんだけど。柚葉のこと、好きだよ。ね、柚葉、もちろん彼氏なんていないよね?」

「彼氏・・・うん、いない、よ」

そう、バンドのメンバーにはダンと嘘で付き合っているなんて言っていないし、実際も本当の彼氏ではない。

「じゃ、俺たち付き合おう。会ってなかった1年を取り戻そう」

「たっくん、会ってなかったって言うけどさ。たっくんが勝手にピアノ辞めたからだよ。会おうと思えばいつでも会えたでしょ」

「んーーー。そうだけどさ。柚葉がこんなに可愛くなっているなんて思ってなかったし」

「たっくん、好きな人とじゃなきゃお付き合いしちゃだめだよ。たっくんは私のこと好きじゃないでしょ」

「柚葉のこと、好きだってば」

私とたっくんのらちが明かない会話を聞いていたタクさんが、

「はいはい。ハルはその辺にしておけよ。今日はレコーディングなんだから。ユズ、悪いけどまたダンのこと呼んできてくれる?」

「はい。行ってきます」
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