嘘カノでも幸せになれますか

私はたっくんから離れて、マスターの所にいるであろうダンを探しにスタジオを出た。

「マスター、ダンが来ませんでしたか?」

「ああ、ダンくんなら凄い勢いで外に出て行ったよ。何かあったのかい?」

「いえ、何も無いんですけど。ダン、どうしたんだろう。ちょっと探してきます」

マスターとお喋りしてなかったんだ。

お店の表にはダンの姿が無い。もしかしたらまたお店の脇の路地で香梨奈さんと電話してるとか?

それだったら嫌だな。ダンを探しに行きたくない。

どうか電話していないで・・・そう祈りながらそっと路地を覗く。

あ、ダンがいた。良かった、電話はしていない。

ダンは壁に寄りかかって、スマホを見るわけでもなく道路をじっと見つめている。

私が覗いていることに気付いていないから、ダンの側まで行って、

「ダン? あのね、スタジオに戻ろう」

ダンは私の声に反応して、ゆっくりとこちらを見る。
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