嘘カノでも幸せになれますか
「柚葉、何があったか知らないけど、今日の収録が無理そうなら帰ろうか? 俺、送ってくよ」
「ううん、大丈夫。キーボードが抜けちゃったらダメだよ。すぐに泣き止むから」
「俺さ、デモ収録はまだ無理だけど、ライブには出るから。俺の助っ人は今日までで大丈夫だからな、柚葉」
「そうなの、たっくん。手の怪我はもう大丈夫なの?」
「ああ、こんな包帯してるけどもうほぼ完治してるんだ。柚葉には絶対にライブなんて出ないで欲しいから。ダンと柚葉が居なかったときに、あっちのメンバーには話しておいたから」
「うっ、うん。分かった。私もそうしたい。もう今日でMGRはおしまいにする」
「じゃ、頑張っちゃおうか。柚葉、はやく泣き止んで。皆が待ってる」
そう言われたからスタジオの中を見てみると、アヤさん、タクさん、カイトさんが心配そうにこちらを覗いていた。
「ごめんなさい。もう大丈夫だから。スタジオに戻ろう、たっくん」
「よし」
たっくんは私の頭をポンポンと撫でてから、両手を差し出してくれて、私のことを引っ張り、立たせてくれた。