嘘カノでも幸せになれますか
内側の扉を開けてスタジオに入ろうとした時、外側の扉からダンが入ってきて、
「ユズ、話の途中で先に行くなよ。俺、大事な話をしたかったのに」
何も知らないダンはそんな風に私を軽く咎める。
「ダンさ、もう柚葉に構わないでよ。柚葉は今日でMGR辞めるんだし。もう柚葉のことは放っておいて」
たっくんが皆の前でそう言うと、一人それを知らなかったダンが驚いて、
「ユズがバンドを辞めるって、どういう事だよ」
ダンがたっくんに詰め寄る。
「その言葉の通りのことだよ。今日までの収録が終わったら、その先に予定してあるライブには俺が出るから。ユズは絶対ライブに出さない。もともとは俺がオリジナルメンバーなんだし、文句ないだろ」
するとダンがたっくんの腕を指して、
「その手でキーボード弾けるのかよ? ライブまでに完治するのかよ?」
「ああ、もう大丈夫。そういう訳だから、柚葉は今日までな。今まで俺の助っ人してくれてありがとう、柚葉」
「うん。あの・・・皆さんにもちゃんとお礼が言いたい。MGR活動はとても楽しかったです。本当にありがとうございました。もちろん今日の録音まではちゃんと頑張ります」
私はバンドの皆に向けて挨拶をした。