嘘カノでも幸せになれますか
「ねぇ、もしかして定期か財布無いの?」
すぐ後ろから誰かにそう声を掛けられて、私は振り向いてその声の主が誰なのかを確認する。
「大丈夫? すごく落ち込んでいるように見えるけど」
真っ直ぐ私の方を見て声を掛けてくれたその人は同じ学校の制服を着た、学校では見たことのない男の人だった。
学ランのカラーに付けた学年のピンが「Ⅱ」だから2年生だと分かる。先輩だ。
「えっと・・・。」
「あっ、急に話し掛けてごめん。なんか困っていそうだったから」
「いえ、大丈夫です。ちょっと学校に忘れものしちゃっただけなので。失礼します」
その人は私を心配して声を掛けてくれたようだったけど、知らない人だし、ちょっと迷惑って思ったから素っ気ない返事をしてしまった。