嘘カノでも幸せになれますか
昇降口にはまだ生徒が沢山いて、私は誰にも顔を見られたくなくて少し急いで上履きへ履き替えた。
「柚葉ちゃん?」
靴を仕舞おうと屈んでいると、頭の上から誰かに声を掛けられたから、私は無言でその声の方を見る。
そこには一輝先輩が立っていて、私をじっと見ていた。
「あ、一輝先輩。おはようございます」
「おはよう。さっき二年の女たちが柚葉ちゃんのことを話してたんだけど。柚葉ちゃん、大丈夫か?」
「あ、えっと。はい、大丈夫です。何もありません」
「嘘つけよ。その顔、泣いてるじゃねーかよ」
えっ? 私、今泣いてる? 慌てて目を指で触ると、まだ涙が止まっていなかったことに気付いた。
「これは、なんでもないんです。目にゴミがね、入ってしまっ・・・」
「バカ」
一輝先輩はバカって言いながら、着ていた学ランを私の頭から被せてくれて、周りの人たちから見えないようにしてくれた。
「ふえっ、ふえっ」
私はうずくまったまま、一輝先輩の学ランの中で泣いてしまった。
「柚葉ちゃん、保健室に行こうか。その状態じゃ教室に入れないだろ」
「は、はい。そうします」
一輝先輩は私を抱えて立たせてくれて、一緒に保健室まで付いてきてくれた。
保健室のドアを開けると、まだ先生は来ていなくて誰もいない。