嘘カノでも幸せになれますか

「椅子に座ろう」

一輝先輩が丸い椅子を持ってきてくれて、椅子の上をポンポンと叩き、座れと無言で言ってくる。

「ありがとうございます。一輝先輩、制服もありがとうございました」

私はお礼を言いながら貸してくれた学ランを一輝先輩に渡すと、それを受け取った一輝先輩がもう一つの丸椅子を持ってきて、私の正面に向かい合わせに座った。

「大丈夫か、柚葉ちゃん」

「はい、もう大丈夫です。授業始まってしまうから、一輝先輩は教室に行ってください」

「無理。ここにいるよ。柚葉ちゃんを一人になんてできないでしょ」

「そんなに優しくしないでください。涙腺緩いんですよぉ」

一輝先輩が真面目に話すから、余計にうるっときちゃう。

いつものようにからからかってくれていいのに。
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