嘘カノでも幸せになれますか

一輝先輩は頭を抱えて、

「なんでよ?! 柚葉ちゃん、何がそんなに邪魔してるんだよ」

「ダンのこと、信じたいんですけど。どうしても一つだけ気になることがあって」

私はこの時、一輝先輩に香梨奈さんのことを打ち明けようか悩んでいた。

「ダンには大切にしている人がいるってバンドのメンバーにも言われたし、私も・・・ダンがその人と携帯で話しているのを聞いてしまって」

「んーー。誰だ、それ。俺には見当がつかないな。暖にそんな存在の女がいるなんて知らないぞ」

「そうなんですね。一輝先輩も知らないんですね。でも、ダンのことはもういいんです」

「柚葉ちゃん、もういいわけないだろ。ちゃんと暖と話しな。じゃないと、もしかしたら一生後悔するかもしれないぞ」

「一生って。一生後悔しちゃうのかな」

「うん、よーく考えるんだぞ。じゃ、俺は教室に戻るから。柚葉ちゃんも落ち着いたら授業に出なよ」

「はい。話を聞いてくれてありがとうございました」


一輝先輩は私の話を真剣に聞いてくれて、アドバイスもくれて、最後にはダンのことで後悔しないようにって応援してくれた。

最初に会ったときは背が高くて大きくて怖い先輩って印象だったけど、話してみてその印象は180度変わったよ、一輝先輩。

一輝先輩は優しくて、あたたかくて、冗談も言うけどそれは優しい冗談で。

ダンが信頼するのも分かるな。
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