嘘カノでも幸せになれますか

「香梨奈さんって、ダンの好きな人で一番大切な人なんでしょ」

「んーーー、分かった。説明するよ。今から出掛けるぞ」

「今から? だって授業は?」

「そんなのいいよ。サボるぞ。ユズ、行こう」


ダンは私をどこかへ連れて行くつもりみたい。一体どこへ?

保健室から出る時、ダンが私の右手を掴んで歩き出す。

久しぶりに繋ぐ、ダンの左手と私の右手。

暖かいよ、ダンの手。

もうそれだけで涙が零れそうになって。

あー、今日は朝から涙腺が緩いな。


私たちは目立たないように裏門から学校を抜け出して、駅までの道を歩いた。

そんな私たちを2階の廊下の窓から一輝先輩が見ていたなんて知らなくて。

学校を出た時、ダンのラインに一輝先輩からメッセージが入って、ダンがそれを私に見せてくれた。


≪アホ暖、今度はこじらすなよ。柚葉ちゃんを離すな、バーカ!≫


一輝先輩、ありがとうございます。
< 225 / 314 >

この作品をシェア

pagetop