嘘カノでも幸せになれますか
「香梨奈さんって、ダンの好きな人で一番大切な人なんでしょ」
「んーーー、分かった。説明するよ。今から出掛けるぞ」
「今から? だって授業は?」
「そんなのいいよ。サボるぞ。ユズ、行こう」
ダンは私をどこかへ連れて行くつもりみたい。一体どこへ?
保健室から出る時、ダンが私の右手を掴んで歩き出す。
久しぶりに繋ぐ、ダンの左手と私の右手。
暖かいよ、ダンの手。
もうそれだけで涙が零れそうになって。
あー、今日は朝から涙腺が緩いな。
私たちは目立たないように裏門から学校を抜け出して、駅までの道を歩いた。
そんな私たちを2階の廊下の窓から一輝先輩が見ていたなんて知らなくて。
学校を出た時、ダンのラインに一輝先輩からメッセージが入って、ダンがそれを私に見せてくれた。
≪アホ暖、今度はこじらすなよ。柚葉ちゃんを離すな、バーカ!≫
一輝先輩、ありがとうございます。