嘘カノでも幸せになれますか

「もしもし、香梨奈ちゃん。初めまして、本多柚葉です」

『ユズさん、はじめまして。お兄ちゃんと仲直りしたの? この前お兄ちゃんがユズさんと喧嘩してるって言ってたよ』

「えっ? 喧嘩・・・う、うん。仲直りしたんだよ。心配かけてごめんね」

ダンは香梨奈ちゃんに何を話してるの? 喧嘩なんてしていないのに。

『ユズさんって写真でみるよりかわいいね。お兄ちゃんが好きになるのも分かるよ』

「えっ? 写真?」

何のことか分からなくて、ダンに目で助けを求めたのに、ダンが私から目を逸らした。

『パンケーキの写真、可愛いね。あの写真ね、お兄ちゃんのスマホの待ち受けにしてるんだって。ユズさんには内緒って言ってたけど』

「そ、そうなの? えっ? どんな写真だろう。パンケーキの写真?」

私と香梨奈ちゃんが話しているのに、ダンが私から携帯を取り上げて、

「香梨奈、余計なこと言うなよ。内緒って言っただろ」

『お兄ちゃん、ごめん。でも仲直りできて良かったね。もう喧嘩しちゃだめだよ』

「ああ、分かってるよ」

『またユズさんと一緒に会いに来てね。待ってるね』

「おう、会える時はいつでも来るから。早く元気になって退院しような」

こうしてダンと香梨奈ちゃんは通話を切った。

香梨奈ちゃんの体調を考えて5分程度しかお話できないんだって。

携帯を切った香梨奈ちゃんはベッドに横になり、私たちに手を振ってくれた。

元気そうに話していたけど、体調は良くなさそうに見える。

早く元気になって退院できるといいね、香梨奈ちゃん。

私たちも香梨奈ちゃんに手を振って、病室を後にした。
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