嘘カノでも幸せになれますか
「ユズ、こっちにいるから、来て」
香梨奈ちゃんの部屋の前でダンが声を掛ける。
「香梨奈、俺だけど。入るよ」
「うん、どうぞ」
ドアの向こう側から香梨奈ちゃんの声が聞こえた。
私とダンはドアを開けて香梨奈ちゃんの部屋に入り、最初に私から声を掛けた。
「香梨奈ちゃん、退院おめでとう。こうして近くで会えるの嬉しいよ。今日の体調はどう?」
「ユズさん、来てくれてありがとう。あと、病院にも何度も来てくれて、ありがとう。今日は元気だよ」
香梨奈ちゃんはきちんとお礼を伝えてくれて、小学生とは思えないほどとてもしっかりしている。
「体調が良くてよかった。これ、ちょっとなんだけど香梨奈ちゃん使ってくれる?はい、どうぞ」
私はレターセットとお絵描き帳を香梨奈ちゃんに渡した。
「えっ、ありがとう! なにが入っているの? 開けてもいい?」
「もちろん。開けてみて」
香梨奈ちゃんは嬉しそうにラッピングを解くと、中に入っているレターセットとお絵描き帳を見て、
「うわぁ、可愛い! こんなの欲しかったの。どうして私の欲しいものが分かるの、ユズさん! 嬉しいっ。ありがとう」
とっても喜んでくれている香梨奈ちゃんの顔はやっぱり小学生の顔で、多分こっちの香梨奈ちゃんが飾っていない本当の香梨奈ちゃんなんだろうな、って思った。