嘘カノでも幸せになれますか
「なぁ、ユズ。いつも気付いていないと思ってた? 可愛いことしてんなよ。俺、帰れないだろ」
そう言ってダンが私の手を引っ張るから玄関の外へ出ると、ダンがギュッって抱きしめてきた。
「ユズ、好き」
えっ? ここ家の玄関なんだよ。誰かに見られちゃうよ。
「ダン、家の前だって。恥ずかしいから離して」
お願いしても腕を解く気配がなくて。
「ね、ダンってば」
「無理、離せない」
ダンが初めて私のことを好きだと言ってくれた時、確か一度しか言わないからなって言ってたよね。
それなのにこんなに何度も好きって言ってくれて、嬉しい。
「ダン、私も大好きだよ」
「じゃあ、ここでキスしていい?」
「そっ、それはダメ!」
この時間ならまだ家族は帰って来ないけど、ご近所さんの目があるでしょ。後で何を噂されるか分からないもん。
「はははっ、ユズの顔真っ赤」
「だってダンが変なこと言うからでしょ」
「分かったよ。じゃ、今度こそ帰るな。今夜は早く寝るんだぞ」
ダンは私に回していた腕を離して、バイバイと手を振りながら門の外へ歩いて行った。