嘘カノでも幸せになれますか
MGRの曲はたっくんが作曲したんだもんね。
こんなに素敵な曲が作れるなんて、たっくんは音楽の才能があるよ。
「ね、たっくん。フェスに参加できなくてごめんね。落選したのは私のキーボードだったからだと思うの」
「柚葉、何言ってんの? 柚葉のキーボードは完璧だったでしょ。落選したのは何かが悪かったんじゃなくて、俺たちより凄いバンドがいたってことだから」
たっくんはそんな風に私をかばってくれたけど、もしあのデモに参加したのがたっくんだったらって思うと、申し訳なくて。
「俺たちはまだまだなんだよ。それでもバンド活動は楽しいんだぞ。別にフェスだけが全てじゃないんだから」
「うん、そう言ってくれてありがとう、たっくん」
「そうだ、ライブに来れるよなユズ」
「うん、絶対に行くよ。ライブの前の日は私のコンクールに来てくれるんでしょ? 忙しいのに、ごめんね」
急にたっくんがニヤニヤして、
「花束、楽しみにしてて。今回は絶対に優勝してステージで花束もらってよね」
「ん? もらってよね、って。たっくんがくれるんでしょ?」
「ふふん、そうだよ。だから期待しとけって話」
「うん、期待しとくね」
たっくんが変な言い方をするな、って少し気になったけど長く話し込んでしまうとダンの家に行く時間が遅くなっちゃうから、話はそこでおしまいにして。