嘘カノでも幸せになれますか
お母さんとの通話を切ると、ニヤニヤしているたっくんに言われた。
「ほらね。ダンが柚葉のこと無視するなんてないでしょ。あーあ、俺の柚葉だったのにな。ダンと別れたら俺のところに戻っておいでよ、柚葉」
「戻ってくるってさ。最初からたっくんのところには居なかったもん」
「なんだよ、たっくんと結婚するって言ってたのに。しかも誓いのキスまでしたのに。忘れちゃったの、柚葉」
うわっ、たっくんは忘れていると思ったのに。あの幼い頃のキス。
「わ、私は全然そんなこと覚えてないもん。たっくんの思い違いじゃない? っていうか、もう帰るね」
「ははっ、大丈夫だよ柚葉。ダンには黙っててあげるから」
「・・・もうダンには聞かれちゃってるけどね」
「そうなの? ああ、だからダンがやたら俺に冷たいんだ。柚葉のせいだったんだ」
「しっ、知らない。じゃあね、たっくん。またね」
私は急いでたっくんの家を離れて、このままダンの家に向かおうか悩んでいた。
さっきまでは何が何でもダンの家に行ってみるんだって思っていたけど、よく考えたらまた病院に行っているかもしれない。