嘘カノでも幸せになれますか

「おい、ユズ! 弾けるのか? 弾けないのか?」

「ハッ! やだ。また自分の世界に入ってた・・・。はい、弾けます。えっと、さっき見せてもらった曲も1曲目なら弾けると思います」

『ええーっ! マジで?!』

私以外の3人の声が被った。素晴らしいチームワークだな。

「じゃ、まず前に録音したデモを聴いてみてくれるか。俺のスマホに音入ってるから。俺たち練習してるからロビーで聴いて来いよ、はいスマホ」

暖先輩は画面をデモ音源に設定してくれたスマホを私に渡して、練習するためにギターを肩に掛ける。

私は暖先輩のスマホを持ってスタジオのロビーまで移動して、イヤホンでそのデモを聴いてみた。

1曲目に流れたのは私が見せてもらった楽譜の曲で、結構激しい感じのロックだった。

初めて聴くこの曲は、確かにキーボードが抜けてしまうとサビのメロディが弱くなるな。

バンドのことは素人だけど、私にはそう感じた。

そして、初めて聴くボーカル。

男の人だよね? 低音はしっかりと男性の声で歌い、それでいて高音もきれいに出ている。

高音を歌う時は女性的で、こうして聴いていると男女のツインボーカルなんじゃないかと勘違いしてしまいそう。

なんて繊細できれいな歌声なんだろう。
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